2005年 07月 16日
Last 5 Years@シアターX |
【作】ジェイソン・ロバート・ブラウン
【演出】鈴木勝秀
【出演】山本耕史 Nao
破局した恋人たちの出会いから別れの5年間を時間軸を逆にして見せるという構成をきっちり観客に伝えるには、やはりそれなりの演出と演技力が必要とされると思う.
しかも、連続する事柄を歌っているというよりは、ある時点での感情を細切れに紡いでいっているので、歌と歌の合間の出来事や感情を補いつつ見なくてはいけないという観客側への要求もかなり高い舞台だ.
そして想像させるヒントとなるのは、最終的にはやはり役者の歌の力だ.そこが弱いとなんだかよくわからないうちに芝居が終わってしまう.
本来ならば、最初と最後にキャサリンがメインの歌が来ることからもわかるように、嵐のようにやってきて去っていたジェイミーという天才児に振り回されたキャサリンに気持ちがのるはずなのに、実際に舞台を見るとジェイミーの気持ちばかり伝わってくるのは、そもそもキャサリンが好きなタイプの女性ではないということだけではなく、演じている役者の力量の差が如実に影響した結果だと思う.
山本ジェイミーは細かいところで演技を変えてきて、実際に舞台に上げたことでの進化が感じられた.
初日には微妙だった時計の声音がぐんとわかるようになっていた.前回は地の声とシュムールの2種類はきっちりわけてたけど時計は変えてるのか変えてないのか今ひとつはっきりしなかったの.
シャツのボタンと外したり止めたり、あまり真剣に見てなかったので覚えてないけど、ああいう細かいところで年齢や時間の経過を表してたように思う.
ラストのキャサリンに嘘をついたり別れを告げたりするシーンの細かい表情の変化や感情の込め方が凄い.歌で感情を伝えることがちゃんと出来ているし、その歌と身体表現もあってる.それ日本人じゃないよって思う身のこなしは輸入ミュージカルには合ってるんじゃないですかね.
最後のほうはキャサリンと違って身体をほとんど動かさないでも声と表情で感情を伝えられていた.
ちょっとお疲れ気味なのかハイトーンのあたりが厳しい.あと低音がもう少しクリアに聞こえればいいんだけど、声質的に難しいのあなあ.
キャサリンはねえ……どう言ったらいいんだろう.
特別山本君のファンでもない単なるミュージカル好きけいちゃんや芝居好きMIHOっちの「どうせなら山本君の1人芝居で見せてくれればいいのに」という感想が全てを表してると思う.2回目だから慣れも入って大丈夫かと思いきや、2回目のほうが更に厳しかった.
最初と最後で変わらないんだもん.近くで見ても歌うことで手一杯って感じなの.だから表情が最初の別れをまだ納得できず心の整理がついていない頃と、最後の恋を始めたばかりの嬉しさ一杯の頃とでまったく一緒.それじゃわかんないよ.
一番きついのがジェイミーを責める歌とオーディションの歌.多分初日よりも大げさに表現するようになっていたと思う.演出の手が入ったんだろうなーっていうの想像ついたけど、だからといってそれが効果的かというとそうでもないところが辛い.テクニックがついていってないから単にバタバタやってるだけに見えちゃうんだよね.
キレイの秋山さんとか見ちゃうとさ(っていうか比べちゃダメか…)、もう少しなんとかならんものかと思ってしまうのです.
あとこれは演出側の問題だけれども、箒の変な振りや甘えん坊っぽい動きはやばいと思う.Naoってダンスをずっとやってたっていうのにあの振りじゃちっとも踊れる人に見えない.あれじゃ可哀想だ.こんな感じってので後は自由に動かすわけにはいかなかったんだろうか.初舞台じゃ難しいのかなあ.
あのダサい衣装もとてもNYにいる女優志望の女性には見えない.実際の見た目は細くて若くて可愛いのに、芝居で表現しようとしてるのはそうじゃない野暮ったい女性ってことなのかしら.どっちつかずでわからん.
それから5年間の時の流れを芝居で表すのが難しいのであれば、そこを演出でなんとかフォローできなかったものか.単純に衣装を変えるだけでもいい.別れのシーンはもうちょっと大人っぽい衣装にするとか、結婚前はもう少しカジュアルな雰囲気にするとか.特に逆行するキャサリンのほうが難しいんだから、せめて衣装だけでも変えて明らかに違う時間を表現しているってことを見た目でわからせたほうが良かったと思う.
実験的な作品なだけにいろいろもったいないと思ってしまった.
by furupanda
| 2005-07-16 21:25
| ミュージカル