2002年 07月 09日
『HAKANA (「いとしの儚」より)』@PARCO劇場 |
井川遥/山崎銀之丞/谷原章介/六角精児/円城寺あや/皆川猿時/冷泉公裕/鈴木裕二/今奈良孝行/中坪由起子/新井友香/ホリ・ヒロシ/河原雅彦
急遽思いついて当日チケットを入手し見に行ってみたら、4列目ほぼセンターというやたら役者が近い席で、役者目当てなだけに嬉しい誤算.うふふ~.
とりあえずお目当ての河原雅彦には大満足.すごいお茶目な鬼で軽いノリがぴったり.ライオンみたいな髪型も似合ってた.鈴次郎(銀之丞)がせっぱ詰まって必死に「鬼-!!出て来い鬼-!!」って叫んでるのに「呼んだ~?(はぁと)」って出てくるんだもの.「このシーンの意味がいまだにわからねーよ」とか、ちょこちょここぼす呟きもおかしい.舞台上で本水を使ってたんだけど、そのせいか銀之丞氏とのやりとりで見事にすってーんとしりもちついたのを目の前で目撃.最初はびっくりしてた会場も、元の立ち位置に戻ってしばらく黙ってしまった河原氏を見て笑いと共に拍手まで起こる始末.「拍手はいらねー」と言ったあと、再度台詞を言い直す.が、私は見た.その後の台詞を言いながら腰をさすっていたのを.それにしても一切表情を変えなかったのはすごい.笑いや拍手が起こっても気まずそうな顔つきすらしなかったよ.ポーカーフェイスの人なんだろうか.『Vamp Show』の佐竹はああいう役柄だからあの演技なのかと思ったら、今回も身のこなし方が同じだった.「おネエさん」って言い方がらしくていいね.後半は文字通り河原氏が出てくるのだけが楽しみだった.
さて、芝居そのものはというと、実はまったく話を知らなかったんだけど、おもしろい題材なだけにどうしてこう間延びするんだって正直もったいなかった.演出がなあ.音楽がなあ.
冒頭は比較的軽いノリで責めてきてるっぽかったんだけど、中途半端で見てるほうがドキドキしちゃった.あれ、ここ笑うとこかなあ~って様子見しちゃうんだもん.思わず笑わせるっていうのはこんなに難しいことなのか.ここんとこ構えなくても笑ってしまう芝居を見てたから余計に辛かった.襖や御簾を使って場面転換してたのはわかりやすくてよかったけど、竹を使った演出は謎だった.特に最後は感動シーンなはずなのに、ああもバサバサ竹を振られたら感動したくても我に返るって.ストレートプレイはそれほど見たことがないので、基本的に何をやられても楽しめる性質なのに、今回はさすがにあららららって冷めて見てしまうところが多々あり.派手にやるのか地味にやるのかどっちつかずで収まりが悪いせいか、あんなに前で見てたのに芝居が遠かった.
音楽は、はっきり言わせて貰えば最悪です.なぜクラシック? しかも超有名曲にオンパレード.ハカナと鈴次郎の泣かせどころであの曲が流れてきたら(タイトル度忘れしたけどマジで誰もが知ってる曲)、まるでピンチの時に流れるトッカータとフーガみたくはまり過ぎで笑ってしまった.花魁ハカナの道中でのカルメンもねえ……センス無さ過ぎ.しかも歌舞伎役者の見得を見慣れた目には井川遥の見得があまりに決まらなすぎて泣けてきた.高下駄のあしらいも着物のさばき方もまずい.本職と比べちゃいけないんだろうけど、あまりにもひどかったのヨヨヨ.和物は歌舞伎フェチなだけにどうしても見る目が厳しくなってしまっていいんだか悪いんだか.衣装とかも実は気になるんだよねえ.
で、井川遥である.思ったより全然きれいで可愛くて見た目は良かった.でもね、全編を通して「ワーッ」っつって泣いてたイメージしか残ってない.身も世もなく泣く芝居が続いちゃって食傷気味でしたわ.そういうシーンてなんとなく『演技派』っぽく見せられるじゃない.でね、普通の台詞になるとなんとも一本調子で落差が激しい.泣ける芝居が出来るのはわかった.だから他の芝居も見せてくれって気持ちになってしまった.彼女が出てくるとこっちのテンションが下がるんだよなあ.わ、また泣いてるってギョッとしたもん.こういうのを『体当たり演技』とかいって評価するんだろうか.多分顔があまりわからないもっと遠い席で見てたらもう少し違った感想をもてたかもしれない.
実質話を引っ張っていってたのが山崎銀之丞.寡聞にして存じ上げない役者さんだったんだけど、プロフィール見たらかなりキャリアのある方らしい.鈴という男のやるせなさ、破滅へと向かうのをどうにも止められない不器用さ、自分で自分を制御できない野蛮さといったものを上手く見せてくれた.だからこそそれを受け止める女優がもう少し演技の幅のある人だと最後まで集中できたかもしれない.
谷原章介.テレビドラマ等で活躍してる役者ってことだけどドラマを見ない私はまったく知らなかった.道理でやたらときれいな顔をしてるはずだ.片目が潰れた役でも十分ハンサムなのは伝わってきた.ふわふわと手触りの良さそうな髪の毛を編み込みにしてるのもキュート.あ、あと声がいいね.聞き惚れた.ただ役としては何をそんなにいきり立って鈴次郎を追っかけてるのかいまいちわかりづらかった.結局最後まで鈴次郎にサイコロ振らせるための布石に過ぎない役のようでちょっともったいないなあって思ってしまった.
河原雅彦と共にもう一つ良かったのはホリ・ヒロシ氏の人形.賽子姫を等身大の人形で表現してたけど、これが凄い良いんだ.人形だから当然表情が変わるわけがないのに、その時その時でちゃんと違う表情に見えてくる.誇り高く我がままで気まぐれなお姫様そのもので見惚れてしまった.
円城寺あや、六角精児、冷泉公裕といった面々もそれぞれ素晴らしかった.こうやって思うと役者は比較的良かったんだよなあ.やっぱ問題は演出?冗長な脚本?最後、私のお隣の女性は物凄い勢いでスタンディングオベーションしててびっくりしたけど、そこまでのめり込めたってのはある意味羨ましい.ちなみに斜め前の男性はラストシーンが終わる前から小さく拍手をし始めてた.あのあたりではすっかり冷めてしまってたからこれまたびっくりしたけど、これまた羨ましいには違いない.
最後水になるかと思ったハカナが花に変わったっていうのは意表をつかれてちょっとグッと来た.やられたよ.あとね、ハカナが日数を数えてた輪っかを青鬼が持ってたってことは、彼が鬼に代わった鈴だったってことなのか?
by furupanda
| 2002-07-09 16:43
| 芝居